person 40 作・堀愛子
秋月 なお(あきづき なお)16歳。
とてつもなく泣きたい気分だった。こういう時は、炭酸でも飲みたい。なんでもいいから、口に含みたい。喉に通したい。
最悪ってほどでもなくて泣くぐらい嫌なことがあったわけでもないのに。
なんとなく好きな音楽を耳にさして、いつもの道を歩く。いつもの駅に向かって歩く。帰ったら当たり前のように家族がいる。
夜なのに都会は明るい。決してすべての明かりが消えることはない。
夜の外の匂い。
風が頬をうつ。冷たい。
今とってもあれが飲みたい。炭酸の強いやつ。
りさが好きな人できたって言った。
学年が一個上の部活の先輩だった。実はわたしもちょっとだけいいなって思ったりしてた。
特にもうなんにも思わないけど。
今日その先輩が、りさと話してたからその場の勢いで「2人は今日一緒帰るんですか?」って言った。ばかだった。りさは少し気まずそうな顔して、わたしを睨んだ。睨んだの。全然予想してなくて、しまったって思った。その後、「ごめん」って言ったけど、りさは「いやいいよ別に」って。
「余計なことしないでよ」いっそそうやって言ってもらった方が良かった。
人とわたしは違うんだよ。なんでそんなことわからないかな。何度も同じ失敗を繰り返してきたはずなのに、また忘れていた。
なんとなく聞いていた歌詞がどんどん当てはまっていく。
答えは出ないけど、これからどうすればいいかとかなんでこんなに泣きたいかとか。
考えれば考えるほどわからないから、
家に帰ってご飯を食べようと思った。
お風呂に入って布団で寝よう。
そしたら朝が来る。その時にはきっとわかってるはず。大丈夫。いつもそんな感じだから。
人混みの中、必死に涙を拭きながら帰る。
夜は短いし、明日もちゃんと来る。
2018年12月17日
堀愛子
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