person 46  作・木庭美生

坂井真太郎。12歳。男。

世界は広い。

でも、僕にはそれがわからない。

だって全然見えないし。テレビなんかでいろんな世界のことを知ることが出来る。

でもそれだってニセモノかもしれない。今どき映画でもいろんなもの作れるし、CGとかで。

いくらでもニセモノが作れる世界だ。お母さんや先生が最近僕によく言う。

世界は広いんだよって。中学校に行ったら僕の世界はもっと広くなるんだよって。

ちょっと意味がわからない。

だって世界の大きさは最初から同じでしょ。先生やお母さんの言う世界がどこなのか僕には全然わからない。

中学校になんて行きたくない。

世界の大きさなんて知りたくもない。そんな怖いの知りたくない。

世界が大きくなっちゃったら僕は僕じゃなくなるのかもしれない。

なんでみんなが中学校を楽しみにしてるのか全然わからないよ。

なんで、鉛筆じゃなくてシャーペンを使って良くなるから楽しみなの。それとも、あの真っ黒な制服を着るのが楽しみなの。それができるようになったら何が変わるの。

僕にはわからないよ。

わからないことばっかりだよ。

大人になったらわかるのかな。中学生になんてならなくていい、はやく大人になりたいよ。そしたらきっと僕のわかんないことが全部わかるようになるんだ。

世界は広いってどういう意味なの。僕には全然見えないよ。


2018年12月27日

木庭美生

0コメント

  • 1000 / 1000