アルティメット case 01  作・木庭美生

え、何この状況。

全然楽しくないんだけど。

全然わかんないんだけど。

せっかくの日曜日なのになんなのこれ。

気合い入れて可愛い格好したのに損した気分。

「見に来てよ。」って言うから来たけど。来たけどさ。

わたし何見せられてるのこれ。

フリスビーでアメフトしてるの、なんなの。

全然楽しそうじゃないし見ててそんな楽しくもないよ。

ルールとか全然知らないし。

審判いないし。

自分たちで審判もやるのとか。

なんかそんなの応援ってかんじでもないじゃん。もう。

ほんとに意味わかんない。

なんか爽やか笑顔に騙された気分。

ベンチで1人でこんなこと思ってももう遅い。

休憩に入って彼はわたしのところまで来てくれる。

またあの笑顔でわたしにいろんな説明をしてくれる。

競技の名前はアルティメットって言うんだよ。

選手同士接触は禁止なんだよ。

審判はいなくてセルフジャッジなんだよ。

あとはスピリットオブザゲーム?なんかフェアプレイへの責任感がどうちゃらこうちゃら言ってた。あとはなんだっけスローワーがなんとか、ピヴォットの位置がなんとかって言ってること全然わかんなかった。

全然覚えてないけどわたしこんなによく覚えたな。えらい。わたしえらい。

彼はもうコートの中で走り回っている。

教えてもらったルールはやっぱりあんまり覚えてないけど、さっきほど楽しくないとは思わない。笑顔にやられたかな。

でもとりあえず、今は頑張って彼を応援する。


2019年2月5日

木庭美生

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