雨 case 03  作・草場あい子

雨が降る中、傘をささずに俯きがちに歩いている女の人がいた。

信号待ち。

彼女は携帯を取り出し、浮かない顔をしている。

なにかあったのだろうか。

なにか大きな失敗でもしたのだろうか。

好きな人に彼女が出来たのだろうか。

彼氏と別れたのだろうか。

とか、私を見て思う人はいるのだろうか。

傘を忘れた。

朝は降っていなかったから。

帰っている途中に急に降り出した。

コンビニで傘を買おうかと思ったが、この雨の為に500円払うのはもったいない。

周りを歩く人達はみんな傘をさしている。

さしていないのは私だけ。

だからと言って、走ろうとも思わない。

雨が目に入らないように少し俯きがちに歩く。

信号待ち。

携帯を取り出す。

朝はこの時間、降水確率は30%だったのに今は90%になっている。

雨は降るだけで悲しい雰囲気を醸しだす。

だから傘をさす人の中、ただ1人傘をささずに歩く私は、

勝手に、ない背景を想像されているのだろうか、と、妄想しながら家路につく。

今度からちゃんと折りたたみ傘を常備しよう。


2019年5月1日

草場あい子


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