ペット case02  作・木庭美生

いつも通り送りだす。

ありがとうございました。と言って送りだす。

誰かのペットになる子たち。

自信を持って言えるのは、わたしが1番あの子をかわいがってて知っているということ。

職場に出てきて一番最初に掃除をする。

ご飯を食べるのだから当然排泄はする。その掃除。

綺麗にしたらそのあとご飯。子犬や子猫のご飯をふやかしたりもする。

いつも通りの仕事。

健康管理をしたり、たまにお散歩に行ったり、お客様の相談にのってアドバイスをしたり。

飼う気のないお客さんやマナーを知らない小さい子どもが店頭のケージの動物たちで遊んでいるようなところを見るとイライラしちゃったりする。

バイトから始めて正社員になって5年くらいになる。

今日もまたお客様がくる。

何度か見た顔。ここ最近お店に来てくれているお客様。

いつも必ずある一匹の子犬の前で立ち止まりしばらく眺めてから帰る。

今日もいつものように眺めていた。

はずだったけど、今日はこちらを振り返る。

ケージの中の子犬を指してわたしに話しかけてくる。

笑顔で答え、ケージの中から子犬を出して抱いてもらう。

子犬を飼う上でのアドバイスなどを一通りする。

必要なものを買ってもらい、浮かれ気味のお客様と子犬はこれから家に向かうのだろう。

5年目ともなると何度も経験している。

でも何度経験しても毎回とても寂しくなる。我が子を手放すような寂しさ。

自信を持って言えるあの子を1番かわいがって知っているのはわたし。わたしが1番面倒みてるし触ってもいる。わたしが1番。

でもきっとそのうちそれも更新される。

お客様のペットになって、家族になる子たち。

わたしはもう幸せになることを願うしかできないから

願いながら頭を下げる。

ありがとうございました。といつものように言ってあの子を送りだす。


2019年5月28日

木庭美生

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