2018.11.16 14:45横断歩道 case 05 作:堀愛子僕が最近一番気になるのは、妹のこと。中学2年の妹の秘密。部屋の隅の、ペンとノート。妹が秘密にしてるのは、あの日記。今日何をしたとか、誰が好きとか、そんなことは書いてなくてただ「死にたい」理由が書いてある。妹は死にたいらしい。死にたい、それは自分にはよく分からない感情だった。授業中にお腹が鳴りそうな時、先生にみんなの前で怒られた時、死にたくなるけど。マジで死にたい気持ちなんてやっぱり僕にはわからない...
2018.11.15 14:36横断歩道 case 04 作:渡邉大僕の通っている学校の前に、小さな横断歩道がある。学校に行くときにはいつも使っている。僕の住んでる町はちょっと田舎で、通ってる中学校も偏差値も低くてガラの悪いひとばっかりだ。僕はその学校で生徒会長をしているが、あの学校では生徒会長なんて何の意味も無い。最初は張り切っていたが、仕事をやろうとしても、みんな全く動いてくれない。なにか学校を良い方向に進めようなんて思ってもあの学校で生徒会長なんて立場じゃ、...
2018.11.14 09:50横断歩道 case 03 作・草場あい子久しぶりに実家に帰った。あの頃は自転車で通ってた道を今は車で通る。あ。横断歩道とクリーニング屋さん。懐かしい。私の家の近くの横断歩道の先、一軒のクリーニング屋さんがあった。旦那さんの大助さんと奥さんの祥子さんでこじんまりと経営している。私の家から徒歩15分の場所。私のお父さんはサラリーマン。よくお母さんにおつかいを頼まれてよく行っていた。祥子さんに「さっちゃん」て呼ばれるくらいに。祥子さんは美人と...
2018.11.13 13:28横断歩道 case 02 作・木庭美生真田くんはかっこつけたがりだ。すごくかっこつけたがる。つけたがるというかつけている。でもいつも全然かっこよくない。真田くんはたぶんナルシストだ。よく鏡を見て鏡に映る自分に微笑みかけている。でも彼は特にイケメンではない。真田くんは私と友達だ。ただの友達。真田くんと私はわりとご近所さんで、真田くんと私はわりと仲がいい。だから一緒に帰る。カラスの鳴き声を聞いて、素敵な音色だなんてわけのわからないことを言...
2018.11.12 14:10横断歩道 case 01 作・橋谷一滴図書委員だった。小学校の時、漫画が好きで。好きというか、なんかもうずっと読んでたくらいに好きっていうかちょっと伝わりづらいけど。図書委員で同じカウンター当番だったみっちゃんていう男の子がいてカウンター当番の週に1回、席に着くとみっちゃんはすぐに僕に話しかけてくる。僕はその頃漫画の次にみっちゃんのことが好きだった。僕の拙い漫画の話と、僕が描いた拙い漫画をみっちゃんは大事にしてくれて、ある日、僕が見せ...