2018.11.30 14:10コインランドリー case 05 作・堀愛子「え、なんでいんの?」勢いよく回る洗濯機の音でかき消された声。それはこっちのセリフだ。夜の11時。隅っこのコインランドリー。兄がいた。黒いウィンドブレーカーにジーパン。兄は一年前、いきなり髪の毛を緑色に染めた。グレたんじゃない。染めただけ。日曜日の朝にカステラのジャリジャリの部分を紙からこそぎ取っているあたしに「俺、ちょっと人と違うことしたい」って言ってきた。その次の日、彼の頭は緑になっていた。何...
2018.11.29 14:10コインランドリー case 04 作・渡邉大今日は雨が降っている。せっかくの土曜日で仕事もないのに。休日ぐらい快晴で気分良く居たいのになぁ。部屋干しは和樹さんが好きじゃないから洗濯物も干せないしコインランドリーに来た。一週間分あるから洗濯物の量もなかなかのものになってる。全部入れたらスイッチを押す。ぐるぐると回り始めた。しばらくかかるかな。私の他には誰もいない。最近は私みたいな兼業主婦のお客さんとか増えたってどっかで聞いたんだけどなあ。一人...
2018.11.28 08:40コインランドリー case 03 作・草場あい子私のお父さん。お父さんはせっかちだ。エレベーターの閉まるのボタン連打するし、カップ麺食べる時3分待てないし。私がテレビ見てたら、そんな暇あったら勉強しろって言う。お父さんはよく生きられる時間は生まれた時から決まってるって言う。だからゆっくりしてる暇はないって。でも私はゆっくりテレビ見たいし、ソファに寝っ転がって雑誌隅々まで読みたい。お父さんは生き急いでる。きっと本人は気づいてない。そんな生き方楽し...
2018.11.27 14:50コインランドリー case 02 作・木庭美生家の近くにはコインランドリーがある。わたしの家の近くにはコインランドリーがある。コインランドリーはすごくいい匂いがする。わたしの好きな匂い。わたしはまだ大きいわけじゃないけど、今よりもっと小さい時からこの匂いがすごく好きだった。おひさまみたいな匂いがする。おひさまの匂いはしあわせな気持ちになれる。でも、ちょっと前にわたしのしあわせは壊された。近所のお姉ちゃんによって。お姉ちゃんはたばこを吸う。たば...
2018.11.26 12:35コインランドリー case01 作・橋谷一滴さっきから携帯が鳴っている鳴っているのはわかっているけど私は携帯を開かない誰からの連絡か分かっているからだたぶん。電車に乗りたいなあどこか遠くに行きたい気がする誰も私を知らないような場所で美味しい定食を食べて海に足をつけたいぐるぐるぐるぐる回っている洗濯機を眺めていると私の思いもぐるぐるぐるぐる回り始めて携帯が鳴っていることなんか気にならなくなったりしないかと思っている少し前の話。好きなお皿が割れ...