2018.12.07 07:20郵便局員 case05 作・堀愛子それは特別なクリスマスの朝みたいで、葉っぱの上で光る雫がキラキラしている。絵本に出てくるみたいな真っ赤なポストが実家にはあった。父が日曜大工にハマっていた時に作った郵便ポスト。白い文字で「いつもありがとうこざいます」と書いてあった。小学生の頃。クリスマスの夜にみかんと紅茶を準備して、サンタの正体を探りたくて目を閉じないように必死だった。結局気がつけば朝で、みかんと紅茶は綺麗に無くなってて、ピンクの...
2018.12.06 14:55郵便局員 case04 作・渡邉大寒い。最近、一気に寒くなった。寒いから、公園で遊ぶ子供もあまり見なくなってきた。地球温暖化とかのせいだろう。この時期になると冷たい風が当たって手や顔が固まってくる感じだ。更に、バイクにも乗ってるからなんかもうすごい痛い。こういった時は凄く仕事を辞めたくなる。まあ、多分辞めないと思うけど。郵便局員の仕事は割と僕に合っている。この職についた理由は、「それなりに安定しているから」とかだった。覚える業務作...
2018.12.05 11:05郵便局員 case 03 作・草場あい子朝だ。起きないと。顔洗って、着替えて、メイクして、朝ごはんを食べて、靴を履く。よし。玄関のドアノブを回す。開かない。あ。無理だ。会社辞めたい。普通のOL。普通に大学受験して、普通に就職活動して、普通に生きてきた。普通に。でも私は幸せじゃない。普通に生きているのに。友達も。信頼できる人もいない。会社も楽しくない。私がいなくても皆困らない。何でこんな会社に行かなきゃいけないの。そう思ったらドアが開かな...
2018.12.04 14:30郵便局員 case 02 作・木庭美生僕はよく指を切る。紙で。昔からよく紙で指を切る。わざとじゃないんだけどよく切れてる。よく紙で指を切ってよく指がピリピリと痛かった。僕は中学3年生の時からなりたかった仕事に就いた。郵便局員。手紙を分けたりしたいな、と思ったわけじゃなくて。バイクに乗りたかっただけ。あの赤いバイク。目立つし、かっこいい。高校を卒業したらすぐに就職しようかと思ってたけど大学を卒業してないとだめだったし、僕はバイクの免許を...
2018.12.03 14:02郵便局員 case 01 作・橋谷一滴「あの、ポストの上。座ったことあります?」「ポストですか。ないですね。え、あるんですか。」「あります。」「郵便局員なのに」「やっちゃいました。郵便局員なのに。秘密です。」「はい。秘密です。座り心地はどうでしたか。」「まあまあです。でもその日、ちょっとやなことあったんですけど、ポストの上座ったらどうでも良くなりました。」「それは良かった。手紙で紙ヒコーキ折って飛ばさなかったですか。」「あー。やってな...