2018.12.14 14:20マッチ箱 case 05 作・堀愛子都会の冬はめちゃくちゃ寒い。だからって田舎はあったかいとかそういうわけではないけど。なんていうか、わたし今一人暮らしだから。こたつもないし、とりあえずエアコンでしのぐ。なんとなく朝起きたら観ないけどテレビつけて、冷蔵庫の中のヨーグルトを取り出して、食べる。寒い。こういう時、猫とかいたら絵になるんだろうし、いくらかあったかくなるんだろうけど、そんなお金もない。化粧をして、お気に入りのカーキ色のジャケ...
2018.12.13 14:55マッチ箱 case 04 作・渡邉大マッチ箱。中身はマッチが沢山。当たり前。マッチ箱なんだから。そんな事をかんがえてた17歳の私は先週に習い事を辞めた。これで習い事を止めるのは5回目だったか。マッチって使っている間、メラメラと燃え上がり、熱を持っている。そして燃え尽きてしまう。アルコールランプやガスバーナーにでも付けなければ、火を継続するのは難しい。マッチ箱の中ではその使って無くなった分、新しいマッチを補充しなければだ。私の一生には...
2018.12.12 11:15マッチ箱 case 03 作・草場あい子僕のポケットに古いマッチ箱が入っている。おじいちゃんから貰った大事な物。僕は昔、泣き虫でよくおじいちゃんの所に行っては泣いていた。おじいちゃんはいつも「いっぱい泣きなさい。涙は必ず止まるから。」って言って頭を撫でてくれた。その手は大きくて、優しかった。今でも覚えているあの大きい手。でも、もう居ない。もうあの大きな手も優しい声も。止まらなかった。おじいちゃんが言っていたことは嘘だと思った。泣いても泣...
2018.12.11 13:30マッチ箱 case 02 作・木庭美生いつも通りやってきた今日、いつも通りなのに母さんがちょっとはしゃいでるのは今日が僕の誕生日だから。誕生日プレゼントを貰った。父さんが若い頃に着ていたコートらしい。僕は高校生の時に父さんの背をぬかしていたから小さいだろうと思ってたけど意外と大きくて驚いた。母さんは喜んだ。若い頃の父さんにそっくりだと言われたけどあまりピンとこない。鏡でどんな具合か見てみながらコートのポケットに無造作に手をつっこんだ。...
2018.12.10 14:55マッチ箱 case 01 作・橋谷一滴好きなイラストレーターがいる。男の人である彼は、素敵な絵とともに僕に美術部へ一人で入る勇気をくれた。結果から言うと入った美術部には普通に男の先輩も、同期の男子もいたし何も問題はなかったのだがあれからと言うもの僕は完全に彼の描く絵の虜である。ここで一個挟んでおきたいのが僕は彼自身よりも断然彼の描く絵の方が好きだと言うこと。彼の描く女の人は一人残らず可愛かった。僕はその絵を生徒手帳の中に挟み、そしてこ...