2019.06.14 14:55貯金箱 case03 作・堀愛子脱いだまま置きっ放しのTシャツつけたままのテレビ共同のコンセント物置きになりつつある部屋お皿の端に寄せられたセロリ些細な引っかかりがいずれ大きくなって返ってくるということを知らなかった。積もり積もって、重なり合って、許す許さないの間で揺れ続けて、もう5年になる。私は今だに彼だけを見つめたことがない。5年も同じ場所にいるのに、「彼」よりも、「彼と私」を見てしまう。窮屈だとかそういうわけでもないのに、...
2019.06.12 14:55貯金箱 case02 作・草場あい子靴箱の上にひとつ、貯金箱がある。金色のアルミでできたあの、100万円貯めるやつ。仕事から帰ってきたある日、鍵を置くその横に、その貯金箱は置かれていた。それは、君が買ってきた貯金箱。君はおかえりの言葉と一緒に、それ、すごいでしょ。100万円貯まるんだよ。と、ドヤ顔で言った。500円玉できたら貯金箱していくんだ。って。それから君は買い物をする度にお釣りが500円になるようにした 。意識的に。だけど、そ...
2019.06.11 14:55貯金箱 case 01 作・木庭美生今日は私の誕生日。平日だから普通に学校に行く。学校に行くと休みの日よりもずっと祝ってもらえる。人数いるし。なんかこんなこと考えるのもやな感じではあるけどおめでとうって言われるたびにこれが私が今築いてる人望かってちょっと思ってしまう。築いてる人望ってなんだ。高校生になればまあグループはあるもので私もグループに所属している。そんなしっかり所属しているとかいうものでもないけど。わりと騒がしいグループ。だ...