スーパーマーケット case 02  作・木庭美生

お昼過ぎ。とりわけ今日が特別な日でもなんでもない。

ただの普通のありふれた毎日の中の1日。

お疲れさまです。と、裏に入ればいつものように山際さんが楽しそうにやってくる。山際さんはパートのおばさん。ただ少し周りより占いが好きなだけ。本人曰く、「朝の時間帯の占いなんて全部確認してるわよ」だ、そうだ。この山際さん、自分の占い好きをなぜか私におすそ分けしてくる。いつもいつも最初に駆け寄ってきては私の占いの結果とラッキーアイテムなんかを伝えにくる。

「いい、今日の乙女座は12位よ。でも悲しまないで、大丈夫あなたの今日のラッキーアイテムはガムよ。」

山際さんの占いは正直当たっているのかそうでないのかわからない。特に感じたこともない。とりあえずありがとうございますとお礼を言って仕事の準備をする。

制服を着て、後ろで縛った髪からおちてきてしまっている髪をきちんと束ね直し準備は終わる。

スーパーでの仕事は特に難しいことはしない。品出しをしたりレジを打ったり。私は基本的にレジ担当で、だいたいいつもレジに立っている。特に忙しくもなく1日を過ごす。

ただ平和に。やたらと声の大きなお客さんや、大量のネギを買っていくお客さん、目が合うと愛想笑いのような笑いをくれる店長。特にいつもと変わらない。ときどきガムを食べろとジェスチャーで伝えてくる山際さんに少し困るくらいで運が悪いと感じることはない。

小さなお客様が私のレジにやってくる。ああ、もう17時を回る頃。小学校ももう終わっているのか。小さな男の子は右手にしっかりと小銭を握り嬉しそうな顔で品物を私の前に置く。あ。ガム。10円ガムを2個。握りしめていた20円を受け取り、会計を終える。

袋に入れると店の外に駆け出す男の子を目で追いかける。彼がラッキーボーイか。

山際さんの占いもバカにできないのだなと、思ったところでまた小さなお客様。

先程の小さな男の子が恥ずかしそうにやってくる。10円ガムを1個に当たりくじ1つ。

ああ。当たりが出たから引き換えに来たのか。緩む頬を自覚しながら2度目の会計を終える。なんでもない日の小さな幸せ。

「今日のラッキーアイテムはガムでした。」


2018年10月23日

木庭 美生

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