2018.10.26 06:21スーパーマーケット case 05 作・堀愛子ぼくは見てしまった。腰まで伸ばした長い髪の白い細い彼女のこと。左斜め一直線、窓際の一番前の席。伊藤さんは美人だと思う。彼女のことを初めて見た時、美人とはこの人のことを言うのだと確信した。ぼくが伊藤さんと会話をしたのはたった一回。黒板を見ると自然と視界に入ってくる彼女の後ろ姿はいつもピシッと伸びていて、たまに髪の毛を耳にかける仕草はぼくの授業の妨げになっている。伊藤さんは美人だ。それはぼくだけが知っ...
2018.10.25 14:56スーパーマーケット case 04 作・渡邉大〇スーパーに行くと駐車場が埋まっていた。店員さんは生き生きとしていた。僕の好きなお菓子は売り切れていた。〇つぎに行ったときは駐車場は開いていた。店員さんは相変わらず元気だった。僕の好きなお菓子は今日はあった。買った。〇つぎに行ったときは黒い車が多かった。店員さんは違う人だった。僕の好きなお菓子は今日もちゃんとあった。よかった。〇つぎに行ったときは駐輪場の自転車が一つ倒れていた。なんとなく気になった...
2018.10.24 00:30スーパーマーケット case 03 作・草場あい子土曜日だ。スーパーマーケット行かなきゃ。近くに何もない。あるのは山と川だけ。スーパーマーケットまで徒歩1時間半。だから私は同じ時間にいつもの場所で待っている。彼はいつも同じ時間に迎えに来てくれる。乗ると必ず声を掛けてくれる。降りる時も笑顔で声を掛けてくれる。そんな彼。私は彼のことを知らない。彼も私のことを知らない。でも、必ずいつもの場所に来てくれる彼。スーパーマーケットまでの30分間。話すことはな...
2018.10.22 22:55スーパーマーケット case 02 作・木庭美生お昼過ぎ。とりわけ今日が特別な日でもなんでもない。ただの普通のありふれた毎日の中の1日。お疲れさまです。と、裏に入ればいつものように山際さんが楽しそうにやってくる。山際さんはパートのおばさん。ただ少し周りより占いが好きなだけ。本人曰く、「朝の時間帯の占いなんて全部確認してるわよ」だ、そうだ。この山際さん、自分の占い好きをなぜか私におすそ分けしてくる。いつもいつも最初に駆け寄ってきては私の占いの結果...
2018.10.22 13:00スーパーマーケット case 01 作・橋谷一滴中2だったか。いつか私にはあかりという友達がいて。彼女はその中2の夏休みが終わる前日に、落ちた。スーパーマーケットの屋上から。私の目の前には今空と彼女が落ちたあの屋上がある。あかりは死んだのではない。落ちたのだ。村田へあのさ、絶対秘密やけど あかり 腕の上の方にタトゥーシール貼ってるから。セーラ服で隠れてるから分からんだけやけど確かに貼ってあるから。見せたら先生びっくりするな。見せないけど、貼って...