person 17  作・木庭美生

鮎川悟。男。19歳。
僕は毎朝カフェオレを買う。同じカフェオレ。
大学に向かう電車に乗って改札を抜けるとそのまま駅構内のコンビニへ。
いつもと同じところに並んでいるいつもと同じカフェオレを買う。
毎朝カフェオレ、理由は単純で、彼女もやっていたから。彼女も毎日カフェオレを飲んでいる。僕のとは違う種類の。僕がこれを始めた理由は彼女なのだから同じ種類のにすればいいのにと思ったり思わなかったり。だけどダメだ。同じのはダメだ。買おうと思えば簡単に買える、だって僕が買ってるカフェオレの隣に並んでるし、すぐ買える。でも買わない。
ほんとは一度だけ買ったことがある。彼女が毎日飲んでいる味が気になって買った。でも飲めなかった。恥ずかしかったから。いざ飲むとなると途端に恥ずかしくなって、飲んだら僕の中の彼女を汚してしまう気がした。だからそのカフェオレもけっきょくは弟にあげた。何も知らない弟は普通に飲んでたけど。僕は飲めないことを知った。それからは一度も買ってない。時々違う種類のカフェオレを買ってるみたいだけどそれがカフェオレであるならばなんの問題もない。もし彼女の飲み物がカフェオレじゃなくなったら、紅茶とかになっちゃったらその時僕はどうするんだろう。
彼女を想って、
僕は毎朝カフェオレを買う。


2018年11月14日
木庭美生

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