person 23 作・草場あい子
小山優太。20歳。大学生。
黒縁眼鏡で短髪。本を読みながら待っている。
喫茶店。レトロな雰囲気。焼いたパンで挟むサンドイッチが美味しい。扉を開くとベルの音。珈琲のいい香り。低い声のマスターが珈琲豆を挽いている。
一番奥の窓側。2人席のテーブル。そこが僕の特等席。
僕のお気に入りの場所。
僕はよくここに来る。周りのみんなはスタバとかマックとか。でも僕はここがいい。穏やかで平和。僕は周りのみんなと馴染めない。ノリが分からない。追いつけないし、ついていけない。だからついていかない。
僕はいつも1人でここに来て珈琲を1杯。あとサンドイッチを頼む。マスターが入れる珈琲は美味しい。癖になる。僕はもう虜。
ここは穏やかで平和。だけど。僕の斜め前の席。揉めているようだ。恋人同士の喧嘩かな。けど、もう慣れた。ここはそんなことが結構ある。何故かは知らないけど。この前は探偵って名乗る人と依頼人ぽい人が話してたし、その前も薬指の指輪が違う男女が話してた。親密そうに。ここはよくそういう時に使われてるみたい。僕はそれを本を読みながら観察してる。自分でも悪趣味だとは思うけど。
穏やかで平和なこの空間の中では結構なことが起こってる。そこもここが好きな理由になっているのかも。色んな人が色んなこと考えて、やっぱり人間で生きてるんだなって。そんなこと思ってたら、珈琲とサンドイッチ。挽きたてのマスターが入れた珈琲と焼きたてのサンドイッチ。僕も生きてるんだなっていつも思う。
2018年11月22日
草場あい子
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