マッチ箱 case 05  作・堀愛子

都会の冬はめちゃくちゃ寒い。

だからって田舎はあったかいとかそういうわけではないけど。

なんていうか、わたし今一人暮らしだから。

こたつもないし、とりあえずエアコンでしのぐ。

なんとなく朝起きたら観ないけどテレビつけて、冷蔵庫の中のヨーグルトを取り出して、食べる。寒い。

こういう時、猫とかいたら絵になるんだろうし、いくらかあったかくなるんだろうけど、そんなお金もない。

化粧をして、お気に入りのカーキ色のジャケットを羽織って、ムートンブーツを履く。

ドアを開けると冷たい風が入り込んでくる。

足の隙間から冷えていく。

慌ててチェックのマフラーを取ってくる。

今日も帰ってくればコンビニのご飯を食べて、お風呂に入って、冷たい布団で寝るんだろう。

田舎の雪景色を思い出す。

ご飯食べたいなぁ、お母さん。

帰ってくれば、いつも通りコンビニのご飯を持って帰ってきていて、今日のバイトの失敗を繰り返し思い出しながらお風呂に入っていた。

このまままた明日が来る。

すると届け物が来た。実家からだった。

お米な気がする。そんなことを思いながら開けたら、

マッチ箱。

マッチ箱がいっぱい段ボールに詰められていた。

今日どれくらいわたしはこんな表情をしてたんだろう。凍っていた顔があったかく緩んでいくのが分かった。

わたしの家にはマッチを使えるものなんて無い。なんで送って来たの、お母さん。

泣きながらマッチに火をつける。

あったかい。

ありがとう。


2018年12月14日

堀愛子

0コメント

  • 1000 / 1000