person 65  作・橋谷一滴

袋いりますか

と言われたのでとっさに

あ、大丈夫ですー

っていったら

裸のドーナツを持つ羽目になった。

目の前を自転車が通る

ドーナツが風に吹かれた。

18時

陽は暮れかかっている。

ドーナツをかじるが

昼ごはんを食べなかったからか

久しぶりすぎるドーナツだからか

二口目で油が身体中を回った気がした。

もう飽きた。

閉まりかけの購買に滑り込んだにも関わらず

もう飽きてしまった。

火曜日の授業でクラスが同じのあの人は

川沿いのマンションへと

走って消えた。

ドーナツをかじりながら川沿いを歩く

残りを口に押し込む。

明日は火曜日だ

油がまた体を回る。


2019年5月6日

橋谷一滴

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