person 67  作・草場あい子

コンビニから帰ってくると、マンションの前に大きなトラックが止まっていた。

エントランスの自動ドアが開いている。

同じマンションに誰かが引っ越してきた。

春です。

僕がここに引っ越して来てからもう1年が経った。

引っ越し会社のロゴがプリントされた制服を着た男の人に笑顔で挨拶をされた。

咄嗟のことで会釈しかできなかった。

エレベーターを降りてすぐ。7階。僕の家。

僕の一人暮らしはここから始まった。

誰もいない家に帰って、

返事のないただいま。

生活音のない静かな部屋。

窓を開けると外から車の通る音が聞こえる。

今の日常。

違和感を感じた、

エントランスでロック解除するのにも、

エレベーターで7の数字探して押すのにも、

ゴミの出し方にも、コンビニまでの道にも、

もう慣れた。

きっと、今日引っ越して来た人もすぐ慣れる。

そういうもんだ。

たぶん。


2019年5月8日

草場あい子

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