2018.11.09 13:40マジックペン case04 作・堀愛子はやくマジックペン。筆箱から探す。無い。今だけは絶対に死ねないから。マジックペンを彼の手に渡さなければ。それまでは死ねない。早く渡さなければ。「ねぇ、下敷き。渡されたもののこれになに書けばいいの?」素直くんは寝ぼけ顔で枕に顎を乗せてこっちに訪ねてくる。「なんでもいいよ。サインとか描いとけば?」素直くんはサイン…とか呟いて笑いながら必死に考えている。茶色のボサボサの髪の毛と白い肌。布団の匂いと外の肌...
2018.11.07 12:00マジックペン case03 作・草場あい子教科書の裏表紙の名前。それを見ると君を思い出す。4月。僕は君に恋をした。入学式。僕はマジックペンを忘れた。持ってくる物リストに書いてあったのに。周りのみんなは持ってきて、さっき配られた教科書に名前を書き始めている。今更忘れたなんて言えない雰囲気。すると僕の目の前にマジックペンが現れる。前の席の君がマジックペンを差し出している。僕は「ありがとうございます」と言って君のマジックペンを受け取った。それか...
2018.11.06 14:50マジックペン case02 作・木庭美生5時間目。お昼を食べた後の5時間目の授業。1番後ろの席は嬉しいけれどこの時間は日当たりのいいこの席が憎いとも思う。眠い目をこすりながら、滑舌の悪い山本先生の世界史の授業を必死に聞く。そんな時に見つけてしまった。岡田くん。隣の席の岡田くん。岡田くんはいつも通り寝ている。彼の場合居眠りはいつものことなので先生ももはや諦めている。岡田くんは少しやんちゃだ。不良じゃなくて、やんちゃ。私はそう思う。不良は悪...
2018.11.05 13:41マジックペン case01 作・橋谷一滴江口くん、ペン持っているだろうか。もう多分日が暮れた。外は見えないからわかんないけど夕方から入ったカラオケで3杯目のメロンソーダがなくなる。私はパンパンの通学バックからくしゃくしゃにならないように紙を取り出して、空っぽのメロンソーダカップの横に置いた。私たちは毎日放課後カラオケに入る。歌は、歌わない。私たちというのは私と、江口くんのことで。なんというか恒例になってしまったなあ。決して嫌なわけではな...