2018.11.23 14:50くつ下 case 05 作・堀愛子吉田君は黒縁のめがねかけてて、こめかみの髪の毛を少し耳にかけている。たしか図書委員をしてて、部活は野球部。隣のクラス。あたしの中学校は全クラスで60人ぐらいで結構小規模な学校だから、吉田君のこともすぐに見つけられる。一回だけ話したことあるけど、ほんと友達挟んでの会話だし話したうちには入らないかもしれない。吉田君は人より話す声が小さい。低い声。誰かと喋ってるの見てたら、少し髪の毛クシャってするときあ...
2018.11.22 14:55くつ下 case04 作・渡邉大僕は、くつ下にとても気を使っている。聞くところによると、人目につかないようなトコに気を使う人はオシャレらしい!だからくつ下!普通の人は見ないし!でも、きっとオシャレな人はくつ下を見るはず!その為に、先週の土曜日に新しいくつ下をお小遣いで買ったし。まあ、それもこれもすべて今日のためなんだけど!ふふ、やっぱり中1にもなればオシャレにも気を使わないと!今日はみんなと遊びに行く事になっている。しかも公園と...
2018.11.21 14:54くつ下 case03 作・草場あい子僕の世界は狭い。僕はいつも制服をきっちり着て、授業を静かに受ける。でも僕は優等生ではない。成績は中の中。運動も得意ではない。ただ規定の髪型、規定の制服を校則通りに着て、丈の長さがくるぶしの上までの規定の白いくつ下を履いているだけ。担任の先生はそんな僕を模範という。ただ校則を守っているだけなのに。僕には取り柄がない。誇れることは何も。趣味もないし好きなことも特にない。だからなにか始めようとする。でも...
2018.11.20 13:25くつ下 case 02 作・木庭美生私には付き合って5年の彼氏がいます。同じ部屋で暮らしはじめて3年。私は26歳で、彼は27歳。大学の先輩後輩で、特別親しかったわけでもないけれど卒業後に再会、何度か食事をしたりしてそのまま交際。あの時はここまで続くと思ってなんてなかった、別にタイプでもなかったし。この歳まで付き合っているけど結婚の気配なんてない。まだ女性の初婚平均年齢には達してないし別になんとも思ってないつもりだった。でも、白いドレ...
2018.11.19 14:16くつ下 case 01 作・橋谷一滴今日、会社を休んだ。特にこれといった理由はなかったけれど朝、玄関から出られなかった。ビルの合間を縫ってポートタワーが見える。夕方になった。風が部屋の中まで入ってきたので窓を閉めてカーテンも閉じる。静まり返った部屋に一人で立っていると時計の秒針だけが際立って少し寂しい。電気をつけてみたけれど余計にさみしくなっただけだった。外に出たい。弟はどこかの街でタワーの受付をやっているのだという。どこの街だろう...