レンタルビデオ case 02 作・木庭美生
狭いアパートに一人暮らしをしている。
男の一人暮らしだからと言い訳をして手を抜いた部屋の片付け。いろんなものが散らかっている。別にゴミ屋敷ってわけじゃない。
少し前にブルーレイレコーダー?を買った。中古で。
DVDが見れるらしい。ブルーレイが何なのかよくわからないけど綺麗に見れるんじゃないかな、たぶん。それがずいぶん安くなっていたので買ってしまった。
アルバイト生活の僕にはちょっと痛い出費ではあったけど一人暮らしの寂しさを噛み締める毎日にいい刺激になることを祈って買ってしまった。
そう、安かったから買っただけ中古ショップを見てたら偶然安いのを見つけただけ。
あくまでも偶然なのだ。
けっして、彼女に会いたいからなどというそんな理由で買ったのではない。
彼女はレンタルビデオ店の店員だ。ある日バイトまでの時間つぶしのために入ったレンタルビデオ店で見つけた。
小中高と周りの友だちと一緒に馬鹿みたいに過ごしていた。進路なんて決まってなくてやりたいことも無かった僕は適当に大学に行こうと思った。大学には入れたけど特に楽しくもなくなんとなく行かなくなり、単位も取れてなかったし中退した。大学からはなんとなく一人暮らしを始めていたから大学を辞めると急に一人ぼっちになった気がした。
一人暮らしが寂しくて、でも別に実家に帰って親と暮らすのも申し訳なくて、まだ続けている一人暮らし。寂しい。毎日。アルバイトを始めても寂しくて、適当に片付いた部屋で1人だなと思う。彼女はそんな僕の光だ。
ダサい。むちゃくちゃダサいと思うけど、その表現がいちばん確かだと思う。
僕の好きな女優に似ている気がする。誰だったか名前は思い出せないけれど、綺麗な人だと思う。彼女は綺麗だから。
週に一度、水曜日、18時に僕はレンタルビデオ店に行く。彼女に確実に会える時間はそこだから。まず先週のDVDを彼女に返却する。次に特に何も考えることなく適当に映画を手に取り彼女のいるレジへ。
DVDを僕から受け取る指はすらっとしていて綺麗だった。色白の肌に綺麗な黒髪。白いけれど健康的な肌の色で眩しいと思った。返却期限は一週間後。一週間後のこの時間に会えるのを楽しみに、僕は1人の部屋で散らかった部屋でブルーレイレコーダーは埃を被らないようにしていようと思う。
2018年12月18日
木庭美生
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