スニーカー case 01 作・草場あい子
薄暗い照明の古本屋。
静かで歩く度にスニーカーのキュって音が響く。
古本と雨の匂い。
休日。雨。
することがなく、なんとなく家を出て、
たまたま見つけた古本屋。
ドアを開けると、店内の古本の匂いと外の雨の匂いが交じる。
お客さんは僕1人。
ドアが閉まると、そこは静かで僕のスニーカーの音と誰かがめくる本のページの音だけが響く。
その音は、聞いていると心地がよかった。
大きな棚にぎっしりと詰まった本は、
初めて見るものばかりで、
そこにある全てが新鮮だった。
本を手に取って、文章を目で追う。
ページをめくる音と共に、
追ったもの全てが頭に刻まれる。
不思議な感じ。
僕はその本を買おうと持っていくと、
本を読んでいた店主のおじいさんは、僕に気づいて
「いい本を選んだね」
って言った。
僕はそれから、休日になるとそこヘ行くようになった。
スニーカーとページをめくる音だけが響くそこへ。
いい本を見つけに。
2019年1月9日
草場あい子
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