person 69  作・堀愛子

お姉ちゃんにおさがりでもらった赤っぽいワイン色のタイツ、履いて学校に行ったら、みんなに変って言われた。

12歳。

お金がほしい。

お金があればもっと服が買えて、

雑誌も買えて漫画も買える。

携帯も買える、ハワイも行ける。

お姉ちゃんはバイトができてお金がいっぱいあるからいいよね、新しい服が買えて。

いらなくなったからあげる、

そうやってもらったタイツ。

お姉ちゃんが履いてるの見ると可愛くて

ずっと欲しかったから嬉しかった。

なのに学校に履いて行ったら、

みんなに変って言われた。

変じゃないし、

変じゃないのに、

可愛いと思ったのに、

恥ずかしくて

可愛いでしょって言えなかった。

笑って誤魔化した。

あー、もう学校には履いていけない。

お姉ちゃんはそんなことない可愛いって言ってくれるのに。

もう学校には絶対に履いていかない。

みんなの知らないところで、

遠くに遊び行くとき履いてやる。

みんなよりもっと先に

バイトを始めて

お金持ちになって

携帯を買って

服を買って漫画を買って

ハワイに行って

有名になってやろう。

そしてこのタイツのこと馬鹿にしたこと

後悔させてやる。


2019年5月10日

堀愛子


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