person 70  作・橋谷一滴

目が冴えた

喉が渇いた

布団から出たら寒くなるほど冬じゃなくなった

でも布団を出るのは億劫で

最近聴いてなかった曲をかけて

目を瞑る

日焼け止めの匂いが

迫って来る

教科書が手汗で歪む

魔法瓶の中の音

昨日とか今日とか

すっ飛ばして

いつかあったような

誰も覚えてない記憶を辿ってしまっている

目が冴えた

喉が渇いた

もうすぐ夏が来る

ここには

歪んだ教科書も

あの魔法瓶も

もうない。

水を飲もうと

目を開けると

そこは変わらず真っ暗だった。


2019年5月20日

橋谷一滴

0コメント

  • 1000 / 1000