25mプール case 02  作・草場あい子

僕が通ってた小学校に25mプールがあった。

その頃の僕にとって、それは何よりも大きくて、怖かった。

青い世界で水の流れる鈍い音が響く。

それは僕を飲み込み、このまま僕をもとの世界へ戻してくれないような気がした。

もがいても抜け出すことが出来ない世界。

そんな存在。

けど、今はその世界が好きだ。

あの頃怖いと思っていたあの世界が。

あの鈍い音が。

手を仰ぐ度に肌に触れる水の振動が。

1人の世界が。

もとの世界の騒がしい音から逃れられるから。

怖い存在だったそこは、僕の逃げ道になっている。

今は1秒でも長くいたい。

騒がしい世界へ戻る前に。


2018年12月26日

草場あい子

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