ワンピース case 01 作・橋谷一滴
あ、今彼女のワンピースがついに
海に浸る
脱ぎ捨てた靴は砂浜にころがって
浸る予定のないワンピースが海の中へと入ってしまう。
僕の声は波の音でかき消されて
すんなりと浸ってしまうんだろうか。
多分あのワンピースは
裾下ろしたてのもので
膝くらいのところでうっすらラインが入っている。
彼女の伸びた身長分下下ろされた裾は
だんだんと海に浸って
そしてついにラインが消えた
彼女の足が見えない。
ワンピースのラインは海と彼女の境目になって
僕の足の裏は大量に貝が刺さって
なんだかとっても
いい雰囲気の
裏側を見てしまっているようだ。
ここがサラサラの砂だけの海ならば
彼女のワンピースが海に浸らなければ
もっと何かあるだろうか。
僕はすぐ彼女から目をはなす
海を上がった彼女はそんなこと少しも思っていないだろう
僕は何も言わず
タオルを渡した。
ジーンズの裾を少し濡らしに海へ出る
水の温度がとても低い。
君はどうやってあんな奥まで行ったんだろうか。
僕はまた何かの裏側を見ている気がしている。
2019年1月14日
橋谷一滴
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