ワンピース case 02 作・木庭美生
もうすぐ2時間経っちゃうよ。
やっぱり僕、気持ち悪かったかな。
なんか、ほんとごめんなさい。
調子のってました。
僕は彼女が好きだ。
もちろん恋愛的な意味で好き。
なにがあったわけでもないし、特別なきっかけとかも特にないけど教室の隅でいつも楽しそうにおしゃべりしてる君が好き。
だから、死にたくなるほど噛みながら君に連絡先を交換してもらえないかお願いしたんだ。
君はあっさりOKしてくれて僕はやっぱり死ぬかと思った。
休みの日に会う約束はメールだから噛まずに言えた。
たぶんこの辺で調子に乗ったと思います。はい。
「ワンピース見たいな。」
なんて、調子に乗ってそろそろ2時間経っちゃうよ。
怒らせたかな。
あ。
携帯に彼女の名前が映る。
「持ってない。」
持ってない、持ってないのか。
怒ってなさそうでよかったと思うけど自分がちょっと落ち込んでるのがわかってああ、僕やっぱり気持ち悪いのかもと思う。
ワンピースは彼女に似合うと思った。ミニスカートとかそんなんじゃなくてワンピース。
綺麗なショートヘアが風で揺れるのと一緒にワンピースが揺れるのもきっと綺麗だろうなと思った。だから、調子に乗ってワンピース見たいとか言ったんだろうな。僕。
「本屋に見にいく?」
なんて聞いてくる彼女はたぶん違うワンピース。
それじゃない。
ありったけの夢をかき集めるそれじゃないよと思うけど、もうこのままでいいか。
ワンピース着てなくても好きでいる自信はあるから、次の休みを楽しみにしておく。
2019年1月15日
木庭美生
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